世界的な「エッセンシャル・ワーカー」

飲食店 経営

自由な時間に働け「雇用の受け皿」に

新型コロナウイルスの感染者が増加する中、ウーバーイーツ配達員のように生活インフラを維持するために欠かせない仕事に従事している人々のことを、昨今、世界的に「エッセンシャル・ワーカー」と呼ぶようになっています。外出の自粛やロックダウンが相次ぐ中、医療従事者、公共交通機関職員、スーパーやドラッグストアの店員、配達員といった仕事の担い手は、われわれの社会生活維持に「必要不可欠(=エッセンシャル/Essential)」な仕事の担い手として、その重要性が再認識されているのです。

緊急事態宣言後、ウーバーイーツや出前館といった料理宅配のデリバリーサービスでは利用者が6割増えました。飲食店のみならず、小売店や自治体も宅配サービスに熱い視線を注いでいます。ローソンは5月末までにウーバーイーツの対象店舗を500店に拡大。また神戸市や東京の渋谷区なども宅配サービスと提携し、利用を促しています。

こうした特需を受け、宅配サービス各社はこぞって配達員の確保を活発化させています。宅配ピザチェーンの「ドミノ・ピザ」では、正社員200人とアルバイト5000人の計5200人の採用を目指すことを発表するなど、業界全体で雇用拡大の機運が高まっているのです。

「忙しすぎると身体がもたないのでは」「感染リスクは大丈夫なんだろうか」などとコロナ環境がブレーキとなることも考えられます。そんな中でウーバーイーツの配達員になりたい人が急増し、人材確保に困っていないのはなぜなのでしょうか。

配達員の多くは「ギグワーカー」と呼ばれる人たちです。ギグワーカーとは、インターネット上のプラットフォームサービスを介して単発の仕事を請け負う労働者のことを指します。自分の裁量でスキルや時間を切り売りして働く自由さや気軽さが特徴で、その代表がウーバーイーツなのです。ちなみに「ギグ」とは音楽領域の英語で、ライブハウスでの短い演奏セッションやクラブでの一度限りの演奏を意味するスラング「ギグ(gig)」に由来しています。

「とにかくすぐにお金が必要だ。雇われる安心より目先の生活」と考える人もいます。一方で、「先々が不安だから職を失いたくない。雇用という安定が欲しい」という立場の人もいます。コロナ禍において、右往左往しながら揺れる個人の就業観に対して、宅配サービス業界は、いわば「両面待ち」の状態で仕事を提供しているのです。